オンライン実験とは,インターネットを介して行う実験です。多くの場合は非対面での実施となり,サンプルも大学生に限定されず,一般の方を含む多様なサンプルが参加する場合もあります。近年では,多くの心理学研究がオンライン実験によって行われています。研究だけでなく,授業においてもオンライン実験は徐々に浸透し始めています。このページではJATOS(Just Another Tool for Online Studies)を用いて,lab.js Builderで作成した実験をオンラインで実施する方法を紹介します。
オンライン実験に関しては適切な個人情報保護が必要なため,学生の方は指導教員に相談し,了承を得た上での実施を強く推奨します。なお,山形大学人文社会科学部人間文化コース認知情報科学プログラムに所属する学生がオンライン実験を考えている場合には指導教員に必ず相談してください。
VPSを借りるか,自前のサーバーを用意し,そこにJATOSを導入することでもオンライン実験を行うことができます。JATOSは,オンライン実験用の参加者管理&ホスティングのツールです。サーバーにインストールして利用するので,レンタルサーバーでは利用できません。
公式ではDigital OceanというVPSやAWSでJATOSをインストールする方法が解説されています。自前のサーバーではなくVPSを利用する場合には費用がかかります(費用はVPSのスペックで変動)。日本のVPSで利用する方法は,眞嶋先生による解説があります。
CentOS 8 & Nginx で JATOS 環境を作って,lab.js でオンライン実験を組むときに嵌まりそうなポイント #1 インストール編|Yoshi Majima|note
今回はJATOSの公式サイトにならって,Digital OceanでJATOSを運用し,lab.jsでのオンライン実験を実施してみます。基本的にはJATOSの公式サイトに書かれている手順で,Dockerを使ってJATOSを入れれば簡単に利用することができます。日本の会社でもVPSの初期イメージにDockerが選択できるところ(さくらVPSやConoha VPSは出来るようです)なら,Digital Oceanへの導入と同じ方法でJATOSを導入できます。なお,JATOSはlab.js専用ではなく,jsPsychやOpen Sesameなどの様々なツールで利用できます。追記:執筆後にConoha VPSにJATOSを導入して運用していますが,特に問題はありませんでした。Digital Oceanの方法とほぼ同様の方法で導入できます。
Digital Oceanへの導入は,以下のページに従って行えばOKです。SSH鍵での認証を行いたい場合には,事前に作成しておくと良いです。
ちなみに,Open labとJATOSは似たようなものなので,研究者一人だけがJATOSのためだけにVPSを借りるのであればOpen labを借りる方が楽かもしれません。手間を考えると,実質的なコストはあまり変わらない気がします。もちろん,Open labのプランや借りるVPSの料金によってどちらの費用が高くなるかは異なります。それ以外にも一般的なレンタルサーバーで運用(オンライン実験(サーバー編) )もオススメです。
他の方法と比べて,手間のかかるJATOSを利用することによるメリットはあるのだろうか?という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。JATOS利用のメリットとして,以下のような点が挙げられます。
複数の実験者(研究室)でのオンライン実験を統一して実施できる環境を作れる 大学の学科・コース単位でJATOSを1つ用意し共有して利用するイメージです。アカウントごとに個別スペースが割り当てられます(他のアカウントの実験やデータを閲覧することはできない)。複数人で良いスペックのVPSを借りるのもよいですね。
豊富な参加者募集方法がある(詳しくは→http://www.jatos.org/Worker-Types.html)
*1回しか参加できないのは,ブラウザのCookieが残っている場合のみ
集団実験や縦断実験(調査)が可能
JATOSは実験の際に参加者番号をworkerIDという名前で発行してくれます。例えば,上記のPersonal Single Workerで募集すれば,参加者ごとにユニークなIDを付与するURLを生成してくれます。例えば,以下のようなURLです。